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末の子が暮らす一階がブティックのアパート

 兄弟で唯一上京した末の子は、固定費は安く済ませよという姉の言いつけを守り、郊外に七畳一間の小さな部屋を借りて暮らしていた。三階建ての小さなアパートで、壁は薄く、隙間風はするといったところであったが、最上階であり、部屋の窓を開ければ自分だけの屋上が広がっていたし、それに今の身分にはこれがあっていると言い聞かせていた。

 アパートの一階はブティックになっており、服の販売とともに、縫製も行っているようで、聞くところによるとフランス帰りのデザイナーが立ち上げたブランドだそうで、まだ芽は出てないが、いつか必ず有名になるであろうと、斜め向かいにあるクリーニング店の人情あふれるおばさんが話していた。毎朝九時になるとアシスタントや従業員が出勤し、十七時には教会の鐘の音と共に帰っていくといったところなので、やはりフランス仕込みだとも言われるので、よっぽどクリーニング店の待遇が悪いのであろうと感じた。

 メゾン・ド・ボワールという名のブランドで、お店はこの一軒だけ構えており、青山や銀座、幡ヶ谷のセレクトショップに卸しているとのことであった。気鋭のブランドということで、雑誌にもいくつか取り上げられ始めたようで、クリーニング屋のおばさんの目も間違いないように思えた。

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